配達需要増加、失業の「受け皿」に 心ない対応にも直面
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で自宅にいる時間が長くなり、個人あての宅配便や食事デリバリーサービスの需要が高まっている。運輸業界は慢性的な人手不足が深刻化していたが、コロナ禍で失業した他業種の人が配達員へ転職するケースもあり、「雇用の受け皿」に。ただ、配達員は激務に加え、利用者からの心ない対応にも直面しているようだ。(本江希望、大渡美咲)
「感謝してくださる方がほとんど。ごくわずかだが、『こっちに来るな』と言ってきたり、配達に来たドライバーを菌扱いしたりする人もいた」
軽貨物配送を行うアート・プラ(東京)の横田浩崇代表(45)はこう訴える。新型コロナ感染拡大以降、配達員に対し過剰に警戒する人たちに頭を悩ませているという。
横田氏によると、企業向けの配送が減る一方、一般向けの宅配は増加。他業種に比べ打撃は少ない。これまでの慢性的な人手不足から一転し、コロナ禍で飲食店を畳んだ人など職を失った人からの応募が増えた。応募数は以前より3~4倍増加し、4月にはビデオ会議アプリ「Zoom」を使ったオンライン面接も導入した。
横田氏は「応募数は増えたが、今は宅配しか仕事がない状況だ」と話した。
東京都渋谷区で飲食店の料理配達サービス「ウーバーイーツ」の配達をしている男性(44)はタクシーの運転手だったが、新型コロナの影響で収入が激減。4月から自転車でウーバーイーツの配達員として働いている。
1日の収入は3千~8千円。時給にすると千円にも満たず、男性は「大型連休明けから利用客は半分に減り、収入面で不安がある」と明かす。
長引くコロナ禍で在宅時間が長くなり、一般向けの宅配やデリバリーサービスの需要は急増。ヤマト運輸(東京)によると、4月の宅配便は前年比13・2%増。同社は「4月は緊急事態宣言が出され、個人あての宅配便が急増した」とする。
外食宅配ポータルサイトの「出前館」も3月の注文数は前年同月比21%増で、4月も50%増だった。同社は他の3社と協力し、新型コロナの影響で休業や営業縮小した飲食店で働く従業員をデリバリースタッフとして一時的に受け入れる支援策や、出前サービスの事業者と学生をマッチングする「学生向け雇用支援策」などを実施。同社の広報担当は「この状況がいつまで続くか分からないが、出前の需要があるので、引き続き採用の強化はしていく」と話した。
企業の人材採用を支援する「HRソリューションズ」(東京)の調査によると、4月5~25日のフードデリバリーのアルバイト応募は、前年比415%に達した。同社は「飲食店が営業自粛する一方で宅配は需要が伸びており、積極的に採用している。今までアパレル、スポーツクラブなどで働いていた人が、仕事がなくなってデリバリー業界に流れている」と分析している。
リンク:https://news.yahoo.co.jp/articles/c18d4d5e58e1f286b9cf0385764b59fa11d0ba23
[単語]
1.失業(しつぎょう): 職を失うこと。
2.受け皿(うけざら):物事を引き継ぐための受け入れ態勢。
3.運輸(うんゆ):ふつう、鉄道・自動車・船舶・航空機によるものを総合していう。輸送。
4.人手不足(ひとでぶそく):必要とされるだけの人材(特に若年労働者)が集まらず、思うように業務が行えていないような状態のことを言う。
5.コロナ禍(ころなか):2019年末からの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行による社会的影響のこと。禍(わざわい=재앙)。
6.心ない(こころない):無分別である。 他人に対して思いやりがない。情がない。
7.菌扱い(きんあつかい):세균취급 菌のように扱われる。
8.軽貨物(けいかもつ):軽自動車の貨物車の事である。
9.過剰(かじょう):必要な程度や数量を越えて多いこと。
10.畳む(たたむ):その場所で続けてきた商売や生活をやめてしまう。